第2章 ヒーローになりたい想い
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ひらひら舞う蝶
白く透き通るような羽根
淡く赤が広がっている模様
一目見た瞬間心を奪われた。
意識を奪われたようになにも考えずその蝶を追う。
幼稚園の友だちの輪を気にせず抜け出した。
先生も他の子に手を焼いていて気づいていなかった。
ふと誰かの泣く声が聞こえた。
ハッとして見渡すが例の蝶はもうどこにもいない。
だけど少し先に泣いている男の子がいた。
子供らしくない押し殺した泣き声。
誰も来ないであろう草が好き放題伸びきった場所。
「悲しいの?」
好奇心で声をかけてしまった。
びくりと肩を震わせたその子は振り返る。
左目には痛々しい包帯が巻かれている。
「…痛いの?」
「お前に関係ない」
「やっぱり痛いよね」
しゃがんで目を合わせる。
包帯の上から優しく手でさらりと撫でた。
赤く腫らした目で睨んでくる。
そんなに無視した事に起こっているのだろうか。
ふとお母さんに教えてもらったことを思い出す。
「特別に元気になる魔法かけてあげる」
両手で優しく顔に手を添えておでこと鼻を引っつけてイタズラに微笑んでみる。
すると男の子は目を真ん丸くした。
おでこにチュッと小さなキスをおとした。
元気になったのか尋ねるとおでこを抑えながら「……少しだけ」と答えてくれた。
得意気に私は笑う。
「キミの名前は?」
「……とどろき しょうと」
「しょうと君、私も泣き虫だから一緒に泣こう。そしたら悲しさ半分こだよ!」
ギュッと手を握ると2人とも泣いた。
男の子は暖かい気持ちに触れて嬉しくて
女の子はつられて笑顔で泣いた
そして女の子は男の子を守りたいと強く思った。
これが私と幼なじみの焦凍との出会いであり私がヒーローになりたいと思ったきっかけだ。