第10章 素直な感情
時間も遅くなってきたので手を繋いだまま駅に向かい、
手を繋いだまま乗り換えて…
でもいつもの電車になったら、
由佳はギュッと離れないようにと言わんばかりに
握っていた手をスルッと放した。
取り残され行き場を失った左手は
寂しさで壊れちゃいそうだった。
いつもの二人に戻った。
自宅までの道のりでただなんとなく、
「月…キレイだよ。」
ってもしあの言葉でそう答えてくれたらいいな
と思い言ったけれど…。
「…星がキレイですよ…」
知らないのか、知っていてもあの言葉は使えない
って事かなと思いながら
「僕は…ホントに好きになった人には結構、嫉妬深くて、独占欲も強いみたいでさ。自分のカノジョはきっとかなり束縛しちゃいそうなんだよね。」
「へぇ~意外だね!ふふ。蛍そんなの全然気にも留めない感じなのに」
「どうせ、気持ち悪いって思ったんデショ」
「そんな事思う訳ないでしょ。その彼女さんは幸せな子なんだなって思っただけだよ」
「は?なんで?束縛されてるんだよ。ふつー嫌でしょ…」
「それだけその人が好きなんでしょ?それだけ大事にされるんだからいいじゃん…あたし…」
そう言いかけた時マンション前に着いてしまった。
今日は色々とタイミングが悪い。
お互いのというより周りや、時間が…。
「蛍!今日はありがとう。楽しかった…。いっぱい願うから…。おやすみなさい蛍…」
そう言うとこちらの返事も聞かず
エレベーターホールを走ってエレベーターにのり
僕に手を振っていた。