第6章 左隣と君
「それ、気になるでしょう?気になるのは当然だろうね。縁があるから。あの子とソレ」
…あの子?
…えん???
この人は何を言っているんだろう?
危ない人なのかもしれない。
と思いチョーカーを置いて帰ろうとした時
「それ、彼女がつけている姿みせてくれるなら、2千円でいいよ」
「…それって、もともとぼったくってた値段設定だったから値下げできるってことですか…?」
「いやいや、違うよ!!適正価格はその値段。デザインから何から何まで1から手作りだよ?結構めんどくさいんだからぁ~!バラとかさ、アイビーとかさぁ~。細かいでしょ?ちなみにその三日月にはめ込んでるのはエメラルドだよ~」
そう言うと少し誇らしげな顔をしてはなを鳴らす店主。
「だったら、尚更値下げされる理由が僕には理解不能なんですケド」
「だから!君が、そのチョーカーを渡すことが出来て、その子がチョーカーを身に着けているところを見せてくれるなら割引してあげるって事!」
「…見せに来なかったらどうするんですか?」
「振られたんだなって笑う!ってのは冗談だけどね。そのチョーカーがあの子の元に行くか試しているんだよ。」
やっぱり意味が分からない。あの子って由佳の事をさも知っているように…
でも7千円する価値のあるものが
2千円っていうのはお手頃でいい。
いつ渡せるかもわからないけど。
買っておいて後あと、誕生日とかでもいいし…。
「わかりました。それください。」
店主にそう言い、代金を支払うと、
約束だよ。頑張って…とふわっと笑い、
チョーカーを丁寧に箱にしまうと
白地にピンク色の花びらが舞っている包装紙に器用に包むと、黄緑色のリボンを巻いて渡してくれた。
山口がひょこっと顔を出して
「ツッキー何か買ったの?」
僕と店主のやり取りを聞いていなかったんだろう。
「別に何でもない。ちょっとしたもの」
そう言いながらカーテンを上げ外に出ようとしたとき店主が
「待ってるからね…頑張って…」
そう言って店の奥に引っ込んでいった。
変な人だった。でも、このアクセサリーは良かったから…。
あとはちゃんと由佳に渡せればいいだけ。