第12章 熱の違い
結局由佳は良いあだ名が浮かばなかったらしく
簡単に『ヒトちゃん』と呼ぶことになったみたいで
谷地さんと由佳は二人でキャッキャッと騒いでいる。
それからは由佳達は
マネージャーの仕事を始めて
僕たちの休憩も終り練習に戻った。
最近帰りは僕と由佳、二人っきりだ。
山口は嶋田マートに寄るからだ。
二人きりで一緒に帰るようになって
電車の中で由佳を僕の前に置き
後ろから抱きしめる形を取っている。
簡単に言えば痴漢対策だ。
本当は痴漢だけではなく
誰にも触られたくないのが本音だケド。
それが無理なのはわかっているから
せめて知らない男になんかは触らせたくない。
電車から降り、自宅に向かう途中で不安だらけの中
谷地さんに付き合ってるのか聞かれたから
付き合ってるって答えたから。
と言うと由佳はびっくりしながら
なんでわかったんだろう?
と、ぼくと同じ疑問を投げかけてきて。
僕は
「さぁ?僕たちは普段通りだったと思うケド?」
とだけ答えたが、
由佳は一旦首を傾げながら元に戻して
ニカっと笑い
「まぁ、蛍が嫌じゃないなら、いいじゃん!あたしはヒトちゃんと恋バナってやつが出来るしね!!」
ニコニコしながらそう答えて
恋バナしてみたかったんだよ~
なんて嬉しそうに話している。
それが僕の不安をふわりと溶かしていく。
本当に由佳は僕を温かく幸せにしてくれる。
僕が欲しい時に僕が求める《ソレ》を与えてくれるから
由佳にどんどん沈んでいく…
自力で抜け出せない位に。