第7章 巌窟王
「改めて、今日は……、ううん。今日もありがとう。此処へ来る前だって、来てからだって、私は何度もアヴェンジャーに助けられてるね。」
改めて、アヴェンジャーの顔を見て、お礼を言う。今、こうして私が生きていることは、アヴェンジャーがいてくれたからだ。あの窮地を生き延びることができたのは、他でもない、アヴェンジャーが、血路を見出してくれたからだ。アヴェンジャーの能力が無ければ、私は確実に死んでいた。
「ところで、あの宝具って、何だったの? 『モンテ・クリスト・ミトロジー』って言ったっけ?」
そう。ずっと気になっていたのだ。今まで、アヴェンジャーが使っているところなんて、一度も見たことがなかった。
「使う機会が無かったからな。常時発動型の宝具だが、真名を開放すれば、溜め込んだ怨念が周囲へと撒き散らされる。今日のところで言えば、敵の憎悪が必要以上に増幅され、疑心暗鬼に陥り潰し合った……といったところだな。」
要は、相手を錯乱状態に陥らせたということになるのかな。
「あっ、だからか! だから、あの時、アヴェンジャー私に『対魔力』スキルを調べるように言ったのか!」
「その通りだ。宝具を真名開放したところで、敵の『対魔力』スキルに阻まれては、元も子もなかったというワケだ。冴えているな、マスター。」
「もし、あのシャドウ・サーヴァントもどきたちに、『対魔力』スキルがあったら、どうしてたの?」
「その時は、お前に頼んで、宝具の一時的な強化を頼んでいたさ。」
あぁ、令呪か。私は、まだ右手に残っている、2画の令呪へ目をやった。
「その必要は無かった訳だがな。」
「うん。」
カルデアから令呪の補填が受けられない以上、今日の探索で令呪を温存できたことは、間違いなく大きいと思う。まぁ、代わりに……、その。魔力供給は、キスで、しちゃったけど……、って! 何を考えているの! 私……!!!
ほら、こんなことを考えているからだ! 自分の頬に、熱が集まってくるのが分かる。ぶんぶんと頭を振って、その熱を吹き飛ばそうとするけれど、それは無理だった。当たり前か。