第7章 巌窟王
「あ、ご飯の準備する! 安心したら、お腹空いちゃった! アヴェンジャーも、何か飲む? 昨日、携帯袋にインスタントのフルーツティーが入ってるのを見つけてさ。入れたの忘れてたんだ~。」
「……なら、戴こう。」
食事の支度に、そう時間はかからなかった。自分で、自分の食べる分のレーションを用意して、使い捨ての容器に盛り付けていくだけ。あとは、2人分のフルーツティーを入れる。食事と呼ぶには、簡素過ぎるものだけど、こう見えて栄養バランスは満点、カロリーも充分に摂取できる優れものだ。カルデアの技術は、やはり素晴らしい。
「いただきます。」
アヴェンジャーは、食事は必要ないと言いながらも、私に付き合うようにして、ゆっくりと飲み物に口を付けてくれている。曰く、味覚も変わってしまったとのことなので、美味しいと感じてくれているかどうかは分からないけれど。
「ごちそうさまでした。」
簡素な食事は、すぐに終わってしまう。使い捨ての容器を片付け、顔を洗い、歯を磨いてしまえば、特にすることは無くなる。カルデアの中でなら、戦闘シミュレーションを行ったり、サーヴァントから魔術を教わったりと、やることはいくらでもある。しかし、ここは元・特異点。カルデアとの通信は、依然として途切れたまま。それに、アヴェンジャーと、ふたり。
「眠るか? お前も、随分と消耗しただろう。」
「……うん、そうだね。」
あぁ、でも、その前に。
「アヴェンジャー、少しだけ、隣いい?」
少し、アヴェンジャーと話がしたかった。
「構わない。何だ?」
私は立ち上がって、アヴェンジャーが腰かけているベンチに移動して、彼が座っている隣に腰掛ける。