第7章 巌窟王
「終わった……、の?」
屋上でひとり、私は呟く。
「あぁ。状況終了というヤツだ、マスター。」
気が付けば、アヴェンジャーは私の後ろで、ふう、と息を吐いていた。
「す、すごいよ、アヴェンジャー!」
私は思わずアヴェンジャーに駆け、思いっきり抱きついた。
「おい、マスター。」
頭上から聞こえる、ほんの少しだけ困惑したような、アヴェンジャーの声。
「だって、すごい! こんな状況でも、アヴェンジャーひとりで勝ったし!! 本当に、すごい!! アヴェンジャーの勝利だよ!!」
あんなにも不利な状況だったのに、アヴェンジャーは勝利の可能性を探しあてた。そして、その賭けに見事勝ったのだ。その精神の屈強さが、この勝利に結びついたのだ。それを喜ばずにいられようか。
「マスター。」
「ん?何?」
私はアヴェンジャーに正面から抱き付いたまま、彼を見上げる。
「“俺”の勝利ではない。“俺たち”の勝利、だろう? “共犯者”よ。」
そう言って、アヴェンジャーは笑みを浮かべた。
「――――――!」
その顔はあまりにも綺麗で。私はその瞬間、時が止まったような、そんな錯覚まで覚えてしまった。