第6章 信頼
「ハッ! 上出来だ、マスター! 跳ぶぞ!」
アヴェンジャーはそう言って私を抱きかかえ、校舎の屋上にまで跳び上がった。
屋上から、グラウンドを見る。シャドウ・サーヴァントもどきには、やはり索敵の機能があるらしく、突然消えた私を探すようにして、グラウンドを移動している。どうやら、あまり時間は無いようだ。
「アヴェンジャー、策って?」
「宝具を真名開放する。」
アヴェンジャーは、そう言い放った。
「はぁっ!?」
それは、ダメだ。悪手だ。『虎よ、煌々と燃え盛れ(アンフェル・シャトー・ディフ)』では、仕留めきれない。ほぼ断言できる。連続開放すれば可能かもしれないが、令呪を使い切ったとしても、全ての敵を仕留めきることはできないだろう。そんなことは、アヴェンジャーだって分かっているはずだ。
「説明している時間は無い。あと数分と経たぬうちに、我々は襲撃される。」
「……。」
アヴェンジャーは、いたって冷静だ。
「マスター、俺を信じるか?」
私にそう尋ねてきたアヴェンジャーの瞳は、強く輝いていた。こんな絶望的な状況でも、私を導く、灯火のようだと、そう思った。それに、元より答えなんて決まっている。
「信じる――――――っん!?」
そう答えた瞬間、私の唇は、アヴェンジャーの唇に、塞がれていた。