第4章 誓い
私の唇に触れる、アヴェンジャーの唇。
触れるだけのキスを、何度も。あぁ、これならば大丈夫、唇同士を触れさせるだけの行為だと自分に言い聞かせれば、何の問題も無くやり過ごせるなんて思った私は、甘かった。
触れるだけのキスは、少しずつ、唇同士が触れる時間が長いものになって。唇同士が、強く触れ合うものになって。あーあ。これじゃあ、私、もちそうにない。ほんの数分前の決心が、もうぐらぐらに揺らいでいる。でも、言わない。言えない。
「ん……、ぅ、ん……。」
言えない代わりなのか、私の目からは、涙が出てきた。ひどい話だ。やっと、アヴェンジャーのことが好きって気付いて、事情はどうあれ、意中の相手キスなんてしてもらえているのに。当の私は泣き顔だなんて。いつか目にした絵本では、王子様とお姫様は、幸せそうな顔でキスをしていた。いつだったか、自分が子どもの時に見た結婚式では、花嫁はキスされる時に、最高の笑顔を見せていた。
「……マスター。」
私の異変に気付いたアヴェンジャーが、声を掛けてくれた。
「ううん。続けて。……、続けて、ください。」
その気遣いが、今は辛い。それでも私は、縋るようにして、そう言うしか、無かった。だって私は、未熟な魔術師で、アヴェンジャーのマスターだから。―――――ううん、違う。本当はね、アヴェンジャーにキスされるのが、嬉しいから。
「……んっ!?……、……ふ、ぅ……!?」
私の口内に、ゆっくりとアヴェンジャーの舌が入り込んできた。何が起こったのかは、一瞬、理解できなかったけど。
「……、っ……。」
アヴェンジャーの手が、私の後頭部に回されたと思ったら、私の舌がアヴェンジャーの舌に絡め取られた。そのまま、舌を吸われて、私はいよいよ、意識がぼうっとなった。