第17章 第3部 Ⅲ ※R-18
「――――――好機。」
何か手掛かりがあればと、アヴェンジャーと一緒に、遊郭を探索していた。その時だった。目の虚ろな男性が、ひとりでフラフラと、此方へ歩いてきた。
アヴェンジャーは、その倉の入り口近くを通りかかった男性を、驚きの速さでその中へ放り込んで、さらに身動きが取れないように羽交い絞めにした。その手際の良さには、私も舌を巻いた。辺りに誰もいない、絶好の機会だったのだ。それをアヴェンジャーが逃す理由も無い。
「お前に流れる魔力。お前は普通の人間ではないな?――――答えろ。さもなくば、このまま首を折る。」
男性は、しばらくの間、不気味なほどに何も喋らなかった。不自然なほどに、微動だにしなかった。しかし、その静寂は、男性の挙動によって見事に破られた。
「――――ッ!」
アヴェンジャーによって羽交い絞めにされていた男性は、何の予備動作も無しに、アヴェンジャーの腕へと噛み付いた。アヴェンジャーの着物に広がる紅。
「アヴェンジャー!?」
……何なのだろう。何かが違う気がする。これは、あぁ。違和感だ。一体何に? 私は今、何に違和感を持った?
「大きな声を出してくれるな。そちらの方が不都合だ。」
「ごめん……。」
アヴェンジャーは男を自分から引き剥がし、今度はその左手で相手の首を掴む。そして、そのまま壁へと縫い止める。流石は186センチメートルの長身。およそ平均的な体格の日本人では、この体格差を覆すことなどできまい。まぁ、それ以前にサーヴァントであるアヴェンジャーの筋力に逆らえる人間などいないのだろうが。
……それよりも、この違和感の正体は何なのだろう? そう、そうだ、戦闘。今の戦闘……とはいかないまでも、それだ。何か、アヴェンジャーらしくないような……。