第3章 シラユキと白雪
そうぼやきながら
衝立の向うで仕度を始める
「そう怒るなよ
着物ならいくらでも買ってやる」
「えっ?…ふふ
破産しても知らないよ?」
そんな気もないくせに
可愛い事を言う
帯を渡していなかった事に
気付いた政宗が帯を手に近付くと
「きゃっ!」
小さく悲鳴をあげて
うずくまる
「っ…?なんだよ?」
「のっ覗かないで!」
頬を染め睨みながら
抗議する姿に顔が熱くなる
「…あんまり
可愛い事するとまた襲うぞ」
「っ…だめっ!」
帯を手に必死になる白雪
喉の奥で笑いながら
衝立に顎を乗せて覗き込む
「もぅ!やらしいんだから!」
ぷぅと頬を膨らませ
口を尖らせる
そんな表情にさえ
愛しさが増す
「好きだろ?やらしい俺も」
「っ…もぉ…またそういうこと言う…」
耳まで赤く染め
くるりと背ける白雪
「旨い朝餉
作ってやるから機嫌直せよ」
衝立から放れながら
そう伝えると
白雪が向うから
顔を覗かせて
「わっ!政宗のご飯久しぶり
嬉しいな…楽しみ!」
花が咲く様に笑った
白雪を喜ばせたくて
腕によりを掛ける
にこにこと幸せそうに
平らげ膳を空にすると
「私ね…お料理の勉強したの
今度…食べて欲しいな…」
上目遣いで
ねだられ頬が緩む
「お前が作るなら全部俺のもんだ
頼まれたって誰にも分けてやらねぇよ」
頷きながら嬉しそうに
ふにゃりと笑う白雪
あまりに愛しくて
無意識に身体を引き寄せた
「あっ…」
澄んだ瞳に絡み捕られ
目が離せなくなる
「…政宗?」
不意に動きを止めた政宗を
怪訝そうに覗き込む白雪
急に近くなった距離に
歯止めが効かなくなる
「っ…煽るな…止まらねぇぞ」
「へっ?」
キョトンとする
白雪の唇を掠める
「あっ…もぅ……」
耳まで赤く染め
こちらを睨む白雪に
高揚感が昂る
「その表情…逆効果なんだよ」
後頭部を引き寄せ
すっぽりと腕内に収める
胸の中で身じろぐ白雪の
首筋に唇を添わせると
躰をビクつかせて反応する
「だっ……め…だよ…っ…」
「駄目なように聞えないな?」
「っ…もぉ…意地悪!」
白雪が小さな拳で
トンと政宗の胸を叩いた時
襖の向こうから声が掛かる