第8章 織姫の涙
手を繋ぎ
寄り添いながら人混みを歩く
何処からか
子供の泣き声が聞こえてくる
「政宗!」
「あぁ 聞こえてる」
二人できょろきょろと
辺りを見回すと
通りの端で幼子が
泣き声をあげていた
白雪が駆け寄り声を掛ける
「どうしたの?
お父さんかお母さんと
はぐれちゃったの?」
しゃくりあげながら頷く
「大丈夫だよ 一緒に探そ?ね?」
白雪が頬笑み頭を撫でてやる
「身なりからして武家の子だろ
親も探してる すぐ見つかる
男だろ 泣くな」
政宗がそう言うと
ぴたりと泣き止む
「それでこそ武士だ」
政宗がにやりと笑うと
幼子は武家の息子らしく
凛とした眼差しで頷いた
しゃがみ込み視線を合わせた
白雪が話しかける
「偉いね 僕お名前は?」
「武丸!」
「そっかぁ じゃぁ武丸は誰と来たの?」
「父様と!」
「じゃあ お父様もきっと
武丸のこと探してるね」
武丸は ぐっと歯を喰い縛り
こくんと頷く
涙を堪える健気な姿に
白雪が政宗を仰ぎ見る
「おし 肩車してやる」
「え?」「え?」
白雪と武丸が同時に応え
きょとん政宗を見上げる
「肩車だよ 上から見れば
すぐ見つかるだろ」
「あっそうだね!
政宗他の人より背が高いから」
繋いだ手を離し 政宗が武丸を
ひょいと抱えあげ肩に乗せる
「うわぁ!高い!」
武丸が声をあげた
「怖いか?」
「ぜんぜん!」
得意気に応える顔に
もう涙は見えない
そうして 武丸を肩車した政宗と
その後ろをついて歩く白雪とが
人混みに向かい 歩きだした
暫く人混みをいくと
遠くから武丸を呼ぶ声が聞こえる
視線を彷徨わせ声の主を探す
「あっ!父様!」
武丸が身を乗り出す
「武丸!」
安堵の表情を浮かべた父親が
人混みを掻き分け近寄ってくる
政宗が武丸を肩から
下ろしてやると
一直線に駆け寄る
「武丸!」 「父様!」
抱き締め会い無事を確認すると
父親が礼をしようと政宗を見る
瞬間 父親の顔が凍りついた
(まぁ 想像通りだな…
この街で武家ってことは
漏れなく家臣だよな)
政宗の顔を確認するや否や
瞬時にその場にひれ伏す
隣できょとんとする
武丸の頭を強引に押し下げ
声を張り上げた
「もっ申し訳ございません!」
「止めろ みっともない」
「しっしかし…殿に大変なご迷惑を」