第2章 おかえり
正直
自分に驚いていた
一人の女に
こんなにも心奪われる
日がくるとは…
誰かに執着し
愛を乞うなど
愚かな事と思っていたのに
今では命を掛ける
ことでさえ厭わない
切なく
苦しい程の想い
一度失い
再び手にした幸せに
心が震え…目眩がする
何かとまとわりつく
家臣を人払いして
ようやく
白雪と二人の時を過ごす
半歩後ろを歩く
白雪を振りかえり
視線が絡むと
心臓が痛い位に高鳴りだす
戻ってから
繋ぎっぱなしの
白雪の華奢な手に
そっと唇を寄せた
「政宗…」
ただ名前を呼ばれた
それだけで
呼吸が出来なくなる
程に胸が詰まる
「しら…ゆき…」
溢れ出た掠れた声は
思いのほか弱々して
情けなさが募る
落ち着けと
心に言い聞かせてみても
身体は震えるばかりで…
誤魔化すように
腕を伸ばし強く抱き締める
「っ…ふっ…うぅ…」
見開かれた瞳から
ぽろぽろと
溢れる涙が宝玉の様に美しい
「相変わらず泣き虫だな…」
「…政宗こそ
かっこつけすぎ
っ…震えてる癖に」
「うるせぇ…」
悔し紛れに
噛みつくように唇を奪う
幾度となく角度を変え
舌を絡めて奥深くまで
口中を懐柔する
「っ…んっんんっ…はぁっ」
耳に届く甘い吐息に
急き立てられ更に激しく奪う
腰に手を回し
身体を支えて
唇を首筋へと這わせれば
白雪の確かな
甘い香りに包まれる
この一年何度も夢に見た
蕩けるような
甘い甘い白雪の匂い
(もっと
もっとだ…もっとお前が欲しい )
ゆっくりと息を吸い込み
白雪の匂いで肺を満たしていく
白雪を閉じ込めた香りが
身体の中を駆け巡って
枯れた枝に
水が染み込むように
枯れ果てた政宗の心身を
白雪が満たしていく
「愛してる…白雪」
紅く染まる
小さな耳元で囁いた
「はっ…んん…まさっ
政宗…あ…い…して…」
言い終わらぬうちに唇を塞ぎ
白雪の身体に手をかけ…
馴染みのない衣服に
思わず動きを止めた
(なんだ?これ?)
「?」
「まさ…むね?」
突然動きを止め
眉を寄せる政宗に
白雪が怪訝そうに
顔を覗き込む
「これ…なんだ…どう脱がす?」
「あっ…」