第5章 新たなる日々
白雪の事となると
冷静さを欠く自分を反省する
「ねぇ……政宗」
「んーーー?」
くつろいだ声で答える
「ふふっ」
「なんだよ」
「嬉しかった」
「なにがだ?」
「政宗の……」
「俺の?」
「やきもち!」
「‼」
白雪を仰ぎ見る
得意気に笑ってやがる
(くそっ!)
「…生意気言う奴はこうだ!」
「あっ…」
空が白むまで白雪の甘い声が
襖の奥から漏れ聞こえていた…
安土へと向かう馬の背で
うつらうつらと
船を漕ぐ白雪を
家臣達がはらはらとした
面持ちで見ては
政宗の顔を伺う
「……お前ら
誰が馬に乗せてると思ってる
絶対に落とさねぇよ」
半ば呆れたように声をかける
その声に反応した白雪が
「ん…大丈夫…寝てない」
会話にそぐわぬ返答に
家臣からも笑い声が漏れる
後ろから支えてやりながら
「いいから
寝てろ先は長いぞ」
そう告げると観念したのか
くたっと身体を預け
政宗の胸に寄りかかり目を閉じた
(出会った頃も
こうして馬上で…
俺の胸で子供みたいに
寝息を立てて…)
懐かしさが込み上げ
思わず口元が緩む
「政宗様の
その様な穏やかな顔は
初めて拝見致します」
「姫君も馬の上だと言うのに
安心仕切ったご様子で…
心から政宗様を
信頼しておられるのですね」
「お二人がまた
ご一緒に過ごせる様になって
私どもも本当に嬉しゅう御座います」
回りを囲む家臣達から
次々と声がかかり
面食らう政宗
「なんだお前ら…急に」
「本当に嬉しいんですよ
この一年政宗様の笑顔を見る事さえ
叶いませんでしたから」
政宗は目を
瞬かせ驚く
「大袈裟だな
ちゃんと笑ってただろ」
「表情だけ笑っていても
笑顔とは申しませんよ」
「……お前らに
心配されるようじゃ
俺もまだまだだな」
「そっそのようなことは
…ただ私達は…」
さっと顔色をかえる
家臣達に笑顔を向け
「冗談だ
白雪を一緒に迎えてくれた事
感謝している…ありがとな」
ぐるりと取り囲む家臣らを
一人一人見て礼を言う
「とっとんでもない
お側に置いて頂き
何かの役に立てたならばそれだけで…」