第12章 織田家の姫君
城へ入ると白雪の
使っていた部屋が
そのまま残されていた
「城にいる間は
好きに使えとの
信長様の仰せです」
三成が笑顔を向ける
「政宗…お前はどうする?
邸に行くかここで過ごすか」
秀吉に言われ面喰らう
「お前はって……
白雪も俺も邸にもどるぞ」
「…………」「…………」
秀吉と三成が
顔をみ合わせ黙り混んだ
「まぁ……あれだ…とりあえずは
信長様に挨拶して…それからだな」
妙にそわそわとする秀吉
三成に至っては視線を
合わそうとしない
「お前ら…何を隠してる」
ガタッ
「信長様がお呼びだ!
行くぞ三成!二人とも後でな!」
「はいっ!政宗様
白雪様 失礼します」
ぺこりと頭を下げると
脱兎の如く走り去る
「な…に?今の」
白雪がぽかんと口を開けて
政宗を見る
「……さぁな」
訝しげに顔を歪め
政宗も首を捻った
「ねぇ…針子仲間達に
会ってきてもいい?」
「それは構わんが…
一人で大丈夫か?」
「あ…」
「青葉と違って男ばかりだぞ
喜多を呼んでやるから
ここで少し待ってろ…な?」
優しい笑みを浮かべ
親指で頬を撫でてやる
「うん…ありがとう」
目を伏せて
気弱げな白雪の
唇を掠めとる
「っ…んっ」
政宗は頬を染める白雪に
笑顔を残して部屋を出ると
足早に
家臣達の控える
部屋に向かった
「喜多いるか?」
広間では伊達家の家臣らが
各々休息をとっている
奥州からの土産をほどく者
脚を伸ばして休む者
喜多は……部屋の隅
荷物の中から
白雪の物を選び出し
荷をほどいていた
「政宗様…お呼びで?」
「悪いが
白雪の側に居てやってくれ」
「承知しました」
手早く荷をまとめ
白雪の部屋へ向かう
向かう廊下で
喜多が口を開いた
「秀吉様から……」
「あぁ 白雪の花嫁修行は
順調かと聞かれたから
お前のお陰で
心配ないと言っておいた」
喜多の言葉を遮るように
言葉を続ける
「秀吉も
喜多に任せれば何の心配ない
我ながら名案であったと
笑っていたぞ……」
政宗はそう優しい嘘をついた
全てを悟った喜多が
その場で深々と頭を下げる
政宗は気付かない振りをして
前を見たまま続ける
「白雪の心の傷が癒えて
子が出来たら……そうしたら」
「お前また忙しくなるな」