第11章 意地悪な花婿
肩で息をしながら白雪を見る
(あ…またやっちまった)
白雪は長い髪と
両の腕を畳に広げて
失神していた
激しく抱きすぎて
意識を手離した後は
起き上がれない事の多い白雪…
一瞬
眉を吊り上げ怒る
喜多の顔が見えた気がして
政宗は思わず
後ろを振り返った
勿論
そこには美しい襖絵が
あるだけなのだけれど…
翌朝 否
翌日の午後
白雪が目を覚ますと
既に日は昇り
むろん政宗はもう
政務に向かっていた
慌てて起き上がろうとして
躰の痛みに動きを止める
「っ…たたっ」
(そっか……昨日……)
熱を集める頬に手を当てて
身体に目をやると
きちんと夜着を身に付け
褥に乱れもない
(政宗…着替えさせてくれたのかな
あっ…膳もそのままだったし)
(畳も濡れて…汚しちゃった…
よね……全部 政宗が?
それとも……女中さん呼んだとか?
…見られちゃったのかなぁ
うーー恥ずかしすぎるよぉ)
そんな事を思いながらふと
文机を見ると
政宗からの置き手紙
******************
白雪へ
お早う 寝坊助
昨日は無理させたから
今日はゆっくり休め
喜多には伝えておく
追伸
身体を拭いて
着物を着せたのは俺だ
畳もついでに拭いておいたから
女中を見ても赤くなるなよ 政宗
******************
(っ…もぉ…政宗ってば…
どうして考えることまで
ばれちゃうの…狡いよ…
私ばっかり好きにさせて)
自分を知り尽くす政宗が
嬉しもあり悔しくもあり
手紙を抱き締める様に
胸に抱くと
白雪の手の中でかさっと
二枚目の紙が音をたてる
(あ…もう…一枚?でも…)
よれよれのもう
一枚を広げてみれば
昨日 白雪が練習して
上手く書けず
丸めたはずの一枚……
伊 達
政 宗
その上に良くできましたと
言わんばかりに大きな
二重丸が 付けられていた