第1章 現代
はからずも
現代に戻ってしまった白雪
毎夜
夢に見るのは
煙に包まれながらも
微笑む政宗の顔…
佐助君は
時空の研究観察を続け
動きがあれば必ず連絡すると
約束してくれた
だから…
出来ることをしよう
また
政宗と共に生きる
その日まで…
会えない時間が
心を蝕んでいかないように
私が愛するのは
必要とするのは
共に生きるのは
政宗ただ一人そう誓って
消えない想いを
この身に刻み込んだ
雷が元の火事に巻き込まれ
記憶生涯が残ったということで
落ち着いた二人
佐助は元通り大学院に
白雪は京都に
住まいを移していた
本能寺跡の近く
いつその時が来てもいいように
念願だった
デザインの仕事をこなしつつ
京都でその時を待ちながら
日々を過ごしている
反対する家族を説得し
始めた独り暮らし
部屋はいつも片付いている
家族への手紙も用意した
好きな人がいる
一緒に生きる
探さないで欲しい
幸せであるといった内容だ
心苦しい気持ちは消えないけれど
家族への想いより
政宗への愛が勝っていた
この一年
戻る日のことばかり考えている
会いたい…政宗に…
少し低い声も
澄んだ青い瞳も
温かな大きな手も
幾度となく触れあった唇も
一瞬足りとて
忘れたことはない
会いたくて…
会いたくて…
でも
どんなに辛くても
泣かないと決めた
政宗との約束だから
仕事以外の時間は
習い事や勉強に費やした
何でも出来る女性になって
戻った時
政宗を虜にして
私なしじゃいられなくする為に
書道 華道 茶道 着付
日本舞踊
自然食の勉強から
植物 医学 漢方に至るまで
戦国の世で暮らすのに
使えそうなことなら
何でも吸収する
今日も図書館で
数時間を過ごしていた
(ふぅ…結構ノート溜まったなぁ…)
静かな館内で
ゆっくりと伸びをする
(そろそろ帰ろうかなぁ…)
そろりと立上がると
図書館を後にした
今では毎日の日課になった
本能寺跡の確認
(今日も異常なしかぁ…)
溜息をついたその時
佐助君からの電話
言葉を交わし振り向くと
そこには佐助君の姿が
「っ…今日?今なのっ?」
微笑んで別れを交わすと
雷の落ちた場所に向かって走り出す
ふわりと懐かしい感覚に身を包まれた