第32章 麗しのキミ
くてっと床に寝転がった智さん。俺は腕の中に智さんを抱き上げた。
「大丈夫?智さん」
「ん、大丈夫…」
力が抜けきってぐったりしている智さんを見て激しくし過ぎたことを反省した。
「ごめんね…」
汗で張り付いてる智さんの前髪をかきあげた。
「え、なんで謝るの?」
朦朧としている瞳で俺を見る。
「だって、激しすぎたでしょ?」
「僕が望んだことだよ?」
「でも、智さん怠そう…」
「いいんだよこれで…だから潤を選んだって言ったでしょ?」
確かに言ってたけど、どういうこと?
「潤と初めて会ったとき、この人熱い人だなって思ったんだ。
だから気になった…と言うか惹かれた」
「熱い人が好きなの?智さん、静かな方が好きなのかと思ってた」
「ずっと熱いのは無理だよ?普段は静かな方が好き。でも作品描き終わった後ってどうしても身体が熱くなっちゃうんだ。だからこの熱をなんとか処理しなくちゃいけなくて…」
「えっ!今までもそうだったの?」
「うん。学生の頃はそこまでじゃなくて、キスぐらいで収まってたんだけど作品に熱が入れば入るほどそれに比例して身体が熱くなるんだよね」
「ちょっ、待って!キスって智さん恋人いなかったんじゃ」
「うん、いないよ?だから翔ちゃんに相手して貰ってた」
翔さんに?作品が終わると翔さんが息抜きに来るってそういうこと?
「でも、翔ちゃんがそろそろ限界だって…『俺じゃこの先、智の作品作りに協力できない』って言われた。だから僕に熱を与え続けられる人を探した方が良いってずっと言われてたんだけど、そんなの探して見つけられるものじゃないし無理だって言ってたんだよ…そしたら潤に出逢ったんだ」