第29章 可愛いアナタ
「櫻井課長、来週のプレゼンの資料出来たんで目を通してしただけますか?」
資料を手にした菊池が課長のデスクの前に立った。
「もうできたのか?さすが菊池、仕事が早いな」
菊池は嬉しそうな笑顔を見せると資料を課長に差し出した。
「お願いします!」
「ん、見させて貰う。何かあったら報告するから」
課長は爽やかな笑顔を見せ資料を受け取り捲り始めると菊池はお辞儀をして自分の席へ戻っていった。
「いや~、相変わらずの爽やかイケメンだねぇ」
隣のデスクに座る同期の風間が呟いた。
「え?誰が?」
「課長に決まってるでしょうよ…他に誰が居るんだよ」
少し呆れ顔の風間。
「…俺、とか?」
「イヤイヤないわぁ~」
「失礼だな」
「そりゃあね、相葉ちゃんと課長は従兄弟同士だし、見た目だけならあなたも悪くないけど…仕事ぶりと部下からの信頼度っていうの?雲泥の差よ?」
そんなこと言われなくてもわかってる。
1才しか年が変わらないのに片や課長で片や平社員。
見た目は良いとは言ってくれたけど、それだって翔ちゃんには及ばない。
翔ちゃんには何ていうか、華があるんだよなぁ。
「それにしてもさぁ、菊池もわかりやすいよなぁ」
「え?何が?」
「気がついてないの?菊池のあの目…課長のこと狙ってるでしょ」
「狙ってるって何?」
「相葉ちゃん知らないの?菊池って男もイケるらしいよ?」
「……はっ⁉」
何?男『も』イケるって?菊池ってバイなの?
翔ちゃんのことそんな風に見てんの?
許せん!そんな邪な目で翔ちゃんを見てるなんて。