第6章 *理想の世界と現実の世界* 完結
\姫の逃亡悲劇/
※炎火視点
過去の話になります。
俺がこの世に生まれたと共に、母は死んだ。 体が弱かった母は、自分の命と引き換えに俺を生んだのだ
【姫、おいで?】
【とーさんっ!!】
幼い俺を猫を招くように呼ぶ父。 その頃の俺は父が大好きだった
母が居ない為か、父に溺愛されていた為か…
【姫? 今日は何してたのかな?】
【ひつじさんと遊んでた!!】
【ひつじ…? …あぁ、執事のメアの事ね】
【ひつじのメア!!】
執事のメア。 今でも父に仕えている男だ
父は俺を名前では呼ばない。 死ぬ前に母が残してくれた"炎火"という名があっても、父は俺を名前では呼ばない…
【姫、今日も愛らしいですね】
【姫、今日のおやつはイチゴでございますよ?】
【姫、着物の色はピンクと赤、どちらがよろしいですか?】
毎日、城の者達に俺は可愛がられていた。 実の子かのように…、いや、実の子よりも可愛がられていただろう
世界が俺を中心に回っている。 …そんな生活で、何不自由もなかった
"無邪気な子供"な時までは…