第11章 変化
『そうか……そういう読み方もできるんだね、』
『はい、………あ、エルヴィンさん、踏み台ってあります?』
『??ないが………どうしたんだい?』
わたしにとっては届かないような本箱の高い棚だけど、エルヴィンさんはたやすく届いてしまう……そんな人に踏み台はないよなぁ、と当たり前のことを考える。
『あ、えと、この本届かなくて。』
『ああ、そんなことか。俺がやるよ』
エルヴィンさんは仕事用の椅子から立ち上がりこちらへ向かってくる。
『えっ!?いやそれは大丈夫です!!私の仕事ですから!!』
いつの間にか私の背後にいたエルヴィンさんは持っている本を取り上げて上の棚に本を簡単に入れる。
背中にエルヴィンさんの体温と息遣いを感じて仕事中なのにドキドキしてしまう。
『アンはもっと人に頼りなさい、約束しただろう?』
『っは、はい………』
『なにか困ったことがあったらすぐに俺を呼びなさい、いいね?』
私がこくこくと頷くとエルヴィンさんはいい子だ、と言って頭をわしゃわしゃしてくる。
そしてそのまま自分の仕事に戻る。私も書類整理しないと………
近くの椅子に座りエルヴィンさんが教えてくれたように書類を分ける。これはこっち、これは処分………
その後もたくさんのお仕事を教えてくれた。封筒を閉じる作業、書類の誤字チェック、書類づくり………
そして日が暮れるまで、私はエルヴィンさんの元でお仕事をさせてもらった。