第9章 織田作之助/キミと描く物語
聖子に安吾も紹介し、早速グラスを交わす。
何気ない話をするだけでも楽しい時間だった。
初めてな場所で、初対面の男を相手に呑むのはさぞ緊張するだろうと思っていたが、思いのほかすぐに聖子も打ち解けていて。
俺はそんな光景を微笑ましく眺めていた。
「…ありゃ、聖子ちゃん寝ちゃった?」
「全く。まだお酒に慣れていないでしょうに、呑ませ過ぎたんじゃないですか?」
「大丈夫だ。俺が送っていく」
「おぉ!さすが織田作だね! ところで織田作、彼女は織田作の事大好きなようだけど…織田作はどうな訳??」
「太宰君、不躾では?」
「いや、構わない。聖子は俺にとって大切な後輩だ」
「それだけ?」
「……彼女の好意は嬉しい。だが……俺では彼女を幸せにすることは出来ない」
「……」
「悪いが、先に出る。」
何か言いたげな太宰の視線を外し、聖子を背負った。
気を付けてと2人から言葉を貰い、店を出る。
夜風が気持ちよかった。
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「……ん…、んん…」
「聖子?」
織田作センパイの声がする…。
それに、この匂い…織田作センパイの匂い…幸せ…
「起きたのか?」
「ふぇ…?」
段々、意識がハッキリしていくのが分かる。
身体を軽く起こすと織田作センパイの後頭部が目の前にあって。
同じリズムで揺れるこの振動。
こ…これは、所謂……おんぶ……///
急に顔が熱くなった。
「あぁぁぁぁぁ織田作センパイ!!?? ご、ごめんなさい今降りますからぁぁぁぁぁ!!!!」
「っと。暴れるな、危ないぞ」
「い、いや、だって…///」
「…そうか、嫌だったのか、すまない…」
「ちっ違います!!むしろ死ぬほど嬉しいですありがとうございます!!!///」
「…?? 嫌でなければ、もうすぐお前の家に着く。そのまま動かないでいてくれた方が助かるが」
「は…はい…じゃあ、そう、します……」
あぁぁぁもう天然最高!!
最高に可愛いです織田作センパイ!!!
神様ありがとう!!!!
「織田作センパイ、今日は本当にありがとうございました。すごく楽しくて…一生の思い出にします!!」
「そうか。太宰や安吾も喜ぶだろう」
家に着いて、センパイはゆっくり降ろしてくれた。