第1章 続・愛妻弁当
ぐー。
僕の腹の虫はハンバーグを食らいたいらしい。
「ぷっ。もう。ほらご飯にしよ。」
君は笑って僕から身を翻した。
両手にチューリップの花束を抱えて。なんだか、君の回りだけ春が溢れているような、鮮やかな風が吹いているような、そんな気がした。
「ああ、そうだね。お腹すいたよ。」
なんだか間が抜けたようになってしまって、
緊張の糸がするすると解けていく。
本当はキスしたかったけど。まあ、これくらいできれば上出来なのかも。
「ほら、ご飯できてるから。ハンバーグだよ。ハンバーグ。」
僕は靴を脱ぎながら君の弾けるような声を聞く。さっきまで緊張しすぎて気づかなかったが、廊下には美味しそうな匂いが漂っていた。それを意識するともうそのことし考えられなくなるくらい、その魅惑的な匂い。
やっぱり君は僕を元気にしてくれる。
さっきだって、僕が君を喜ばせたかったのに。その君の少女のような仕草や抱き締めたときの甘い香りに僕の方が癒されてしまったくらいだから。
「ほら早く。冷めちゃうよ?」
君が手招きをする。覗き込んできた瞳は、くりくりと大きくて吸い込まれそうな色をしている。出会ったとき、その瞳に惹かれたのを思い出した。
早くその全てに触れたいな。なんて。
春をまとった君のスカートは、
淡いピンクだった。
ああ、僕はまた君に恋をした。
おわり
(おまけ)