第1章 プロローグ
「メロ。一般人への乱暴はよしてください」
部屋に入るなり、ハルさんやジェバンニたちがこちらに向かって銃を突きつける。
「みなさんもです。万が一、那美さんに当たったらどうするんですか」
それでも両者銃を下ろさない。
「あなたの狙いは一つ。ノートでしょう?」
そう言って、ニアが懐からノートを出した。
「ノート、あとこの女も連れて行く」
「…メロ。那美さんは一般人です。あなたのしようとしていることに、巻き込まれては困ります」
ニアはノートを指二本で持ったまま動かない。
「だったらこの場で撃ち殺す」
撃鉄を引き起こす音が耳元で聞こえた。冷たい感触をこめかみに感じながら。
その瞬間、頭の中で何かが弾けとんだ。
「ニア、ニア、私行く、この人と!ここで死ぬくらいなら!!」
「……だそうだ」
私の反応に少し驚いたこの男、メロは、ニアに振り返りながらそう言った。
「人とは…追い込まれると何を口走るか分からないものですね。いいでしょう」
ニアはそう言って、メロにノートを投げてよこした。
「死神」
ノートに触れた瞬間、私のすぐ近くを飛んでいたリュークを視て、メロはつぶやいた。
「我々には、時間が必要でした。あなたがここに来てくれたことは、とても助かりました。ただ、那美さんに何かあったら、私が許しません。彼女は一般人であり、かつ、私のお気に入りなので」
そうだったの!??
って顔で臨時捜査員たちが一斉にニアを見る。
「っふっふっふ…ニアのお気に入りの女か。そりゃあ、悪いな」
メロはそう言って、私を肩に担ぎ上げた。
「今回は、俺の勝ちだ、ニア。絶対に先にもう一冊のノートを奪ってみせる」
「ええ、また…勝負ですね、メロ」
私はこうして臨時捜査本部から誘拐されてしまいました。