第3章 潜入編
島に潜入後、私たちは港の宿に一泊して作戦会議をした。
「島の中心にあるシリウス教会内では、信者を軍隊として教育も行っている」
メロは巨大な地図を広げて説明を始めた。
教会は要塞のような造りになっていて、三重構造の壁がある。三重の壁の中には軍隊として養成された信者たちが配備されており、本丸に一気に侵入することはなかなか難しい。
「礼拝の時間のみ、本丸である教会内に入ることが可能になっている。その時間、内部の捜索を行う」
「…その時間以外ってどこで待機するの?」
「俺たちは軍隊組に配備されるから一番外側の壁だ。
ただ、少し賄賂を掴ませたおかげで女性信者の教会入りは認められた。教会内に専用の部屋がある」
つまり私だけは24時間教会内待機ってことですね。
「…うん。なんとか見つけられるように、がんばるよ」
ここにきて言葉も分からない場所で一人かぁ、といまさら不安になった。
「え?俺たちもできるだけ那美の部屋ですごすよ。なんのためにここまで来たと思ってんの」
とマットがコーラを飲み干しながら言う。
「お前が言うと違う意図に聞こえる」
「…メロの中の俺のイメージおかしいよ…
まあ四六時中むさくるしい男どもとの軍隊ごっこから逃れたいっていうのも本心だけどさ」
「…よかった…。二人がいてくれないと、少し…いや、かなり不安だった、から」
マットの本心はともかく、一人行動にならなくてすんでよかった。
「やっぱり、那美は相当かわいいね」
安心した表情を浮かべていると、マットがドストレートにかわいいと言ってきた。
一瞬頭が回らなかった。…というか今も回っていない。
「ま、マットさん。わ、私の国ではですね、そんなに真正面から人に可愛いって言わないものなんですよ」
同性ならともかく。
「そうなの?え、俺の日本語がおかしいってこと?」
たいへん不可思議な表情で私を見る。
「いや、ごめん。
おかしくないよ、ありがとうって素直に言うのが正解なんだよね。ごめん」
言われなれていないと対応に困ったし、文化的なものをうまく説明できなかったので謝っておいた。