Sweet Life 〜僕らの甘い時間〜【気象系BL】
第83章 君が還る場所
「行ってらっしゃい。俺はいつでもここで、この場所で、貴方の帰りを待ってるから…」
いつだったか、貴方が俺に言ってくれた言葉を、まさか自分が言うことになるとは、正直あの頃は想像したこともなかった。
俺はあの時、貴方に背中を押して貰ったような気がして、未知の世界に足を踏み入れることに凄く勇気を持てたし、もし途中で躓いたとしても、俺には帰る場所があるって思ったら、安心だって出来た。
あの時ほど、貴方の存在が頼もしく思えたことはなかった。
でもさ、いざ逆の立場になってみたら、俺は貴方みたいには出来ないし、自分で思ってたほど強くないんだってことを思い知った。
離したくない。
出来ることなら、ずっと傍にいて欲しい…
ずっと傍にいたい。
我儘だって分かってる。
でもそう願わずにはいられないんだ。
きっと貴方もそうだったんだよね?
貴方も、今の俺と同じように、顔で笑って、心では声を上げて泣いていたんだよね?
今頃になって漸く分かったよ…
背中を押すことが…、笑顔で送り出すことが、どれだけ苦しくて、寂しいことなのか…
だからさ、本当は聞くべきじゃないって分かってるのに、聞かずにはいられないんだ…
「帰って来るよね? 俺の所に帰って来てくれるよね?」
って。
狡いよな、俺…
貴方がノーと言えない性格だって知ってながら、わざと聞くんだから…、本当に狡い。