第1章 紅き姫の誕生
「ふっ……あははははっ!ちょっと待って、そういう冗談はけっこう」
腹を抱えて、久しぶりの笑いを零す。
だって、冗談を言うような人には見えなかったもの。真面目なイメージだったために、なんだか余計おかしかった。
「そんな大真面目な顔で冗談言わないでちょうだい。私だって、多少、あなたがもしかしたら父さんなのかもって思ったわ。でも、国王だなんて。分かりやすい冗談ね」
でも、これだけ笑って、冗談やめてよ、と言っても彼はにこりともしなかった。嫌な予感が頭をよぎる。
「え……?嘘、よね?」
嘘であることを願いながら、彼の言葉を待つ。
「……今度は私の話を聞かせる番、だったかな」
私の質問を無視して、彼はじぶんのことを話し始めようとする。さすがに少し腹が立つ。
「ちょ、ちょっと!答え───」
「私がお前の母であるエレインと出会ったのは、今から二十年前のことだった」
答えて、と声を荒らげて言った私の言葉を遮り、彼は強引にも話し始めた。