第2章 姫になりまして。
「こちらが王女様のご自室になります。私は廊下で待機しておりますので、何かあればお呼び立て下さい」
「それじゃあ、早速。まず、王女様って呼ぶのはやめてもらえる?私、そういうのは柄じゃないし。あと、そんな堅い言葉話さないでちょうだい。私、頭良くないから何言ってるのかさっぱり分からないわ」
正直なことを言えば、エドウィンと仲良くなりたかったのだ。それに、こんな広い部屋に一人だなんてなんて虚しい。
「ですが、私は王女様の護衛であって……」
「私が嫌だって言うのだから、嫌なの。それに、私は王女とは言っても、国王の落胤(らくいん)よ?半分は下町の人間の血だし、今まで下町で育ったきたの。王家の人から見れば、薄汚い小娘よ」
ここまで口にすると、さすがに自分でも落ち込むが、でも事実なのだから仕方が無い。グロリアとシアンに言われたことは決して間違っていることではない。事実だ。
「いいえ、王女様は私にとって尊敬するお方なのです。ですから、そんなお自分を卑下するようなことおっしゃらないで下さい」
どうだか。
腹の底では、きっと私のことを馬鹿にしてる。
「……ですが……そうですね、王女様がそんなにお嫌なら、姫様とお呼び致します。あと、敬語も少しだけ緩めますね」
……いや、誰でも疑ってかかるのは良くないか。
彼の瞳は嘘をついていない。
これは、下町で培ってきた実力といえよう。嘘をついているか否かが大体分かるのだ。スリをする上で、人を見抜く力を高めた結果、人を見る目が上がったのだ。
それに、疑わなければいけないこの世界だからこそ、信じてみたいと思う。
「姫様……まだ慣れないけど、頑張るわ。あと、廊下に待機してないで、部屋にいてほしいの。どうも広い部屋は慣れないわ」
少し大げさに肩を竦めながら言うと、エドウィンが少し顔に笑みを浮かべた。
「かしこまりました、姫様」