第36章 再起
誘拐当日。
PM7:00
階段を勢いよく誰かが上がってくる。
負傷した左手を引きずりながら。
「誠也!!」
ドアが激しく開いた。
息を切らした親友が立っている。
けれど俺はベッドで寝たまま
「桜ちゃんが…桜ちゃんが…黒人達に連れていかれた!!しかも、黒人だけじゃねーで白人の金髪野郎が……聞いてんのか!?」
親友が近づいて俺を揺さぶる。
聞いてるよ。
言葉に出さずに応える。
「お前いいんかよ!!桜ちゃん何されるかわかんねーぞ!!」
「……でも、俺じゃ無理だ。…助けらんねぇ。」
ゆっくりと起き上がる。
身体がダルい。
何もやる気が出ない。
「バカかお前!!彼女はお前が来るの待ってんだぞ!!」
拓が俺の胸ぐらを掴んだ。
「………無理だって。」
顔を見ずに応えた。
「………っ!!今のお前は本当に最低だ!!上田さんが哀しむぞ!!総長の資格ねぇよ!!」
そう吐き出すと拓は部屋を出ていった。
ドサ――
俺は再び横になる。
わかんねぇよ。
小さく呟いた。