第3章 半宵の反証
「それから遠征というものがあるんですよね、資材調達の。
それじゃあ新しく鍛刀して、刀剣男士を呼ばないと…ですよね」
「それでは明日は、遠征前にこんのすけをお呼びください」
ぽふぽふと尻尾を揺らしたこんのすけ。
「わかりました!そろそろ寝ないとですね…。
こんのすけ、お勤めご苦労様です!
あなたも休んでくださいね」
「はい。主さまもお疲れ様です。
遅くまですみません、おやすみなさいませ」
「おやすみなさい…」
わたしは欠伸を噛み殺しながらこんのすけが帰るのを見送りました。
ふらふらと倒れこむように、一気に深い眠りに落ちました。
…全身が、色んなところが、痛い…。
お風呂の…湯船の中みたい。あたたかい、…水?
瞼が重たくて、視界がぼやけて。
…あれ、こんなに安心できるのに、こんなに嬉しくて心地よくて、幸せなのに、すごく、すごーく不安になってくるのは、どうして…?
わからない…。
これ、何も聞こえないのかな、それともうるさいのかな、耳がおかしい…目もおかしい。
感覚全部、なんか変…?
とっても重たいのに、ふわふわしてる気もする。
大事なことの、筈…?
『大事』っていうか、『一大事』…?
これは何、なんなの、…何?
いやだ。これはいや。
やだ、や、やめて…いや、いやなの、やだよ。
すごく、やだ。
なんで…何なのかもわからないのに、どうして、こんなにも怖くて、いやでいやで、辛くて、嫌になっちゃうの…?
そうだ、私このあと…。
うん…そうだったよね、間違えてなければ。
え、っと…前から、だ。
それから…うん、そうだった…。
でも、じゃあ…あれは…?
…思い出せ、ないの…?
ここまで、わかったのに、なんで?
この先は…、これが怖い?…これが、嫌…?
そういえば、呼吸がおろそかになってた。
苦しい…息、しにくい…。
心臓が、痛いくらい…に動いてて、そうしないと、止まってしまいそうで…。
眠いのに、眠ったらもう、会えないの…?
離れたくない…ずっと一緒に。
淋しいのは嫌だ…。
でもでも、でも、私、は…。
だれか、誰かに、連れていかれる。
口がきけないのかな、指先さえ動かせない。
脳と心臓を働かせるのでいっぱいいっぱい。
なんで、わからないの、思い出せないの。
されるがまま私は、意識を手放した。