第24章 眼鏡。(日向順平)
部活前。
「あれ、順平先輩?」
「あ?あー…か?」
「どうしたんですか?眼鏡」
「あー…ちょっとな、落とした所をコガにバキッと」
見えにくいのか目を細めながら話す日向には苦笑いを浮かべる。
話を聞くに、偶然が重なったハプニングらしい。
「スペアは持ち歩いてないんですか?」
「今日は置いてきちまったんだよ…」
「それだと部活…」
「まぁ無理だろうな、リコに話したら家から取って来いってよ」
ふむ、と日向の話を聞いては考え込む。
取りに行くにしても一人では厳しいのではないか?
「日向先輩、私一緒に帰りますよ!」
「え」
「一人じゃ危ないです!」
「あ、お、おう……」
本当の事を言えば責任を感じた小金井が付いてくる話になっていたが、最早そんな責任などどうでもいい。
が付いてきてくれるって言うなら寧ろ眼鏡を割った小金井に感謝したいくらいだ。
「行きましょう!順平先輩っ」
「ちょ…っ!!手…っ」
「でも…見えないと危ないですし、嫌でも我慢してください」
突然手を引かれ慌てる日向には涼しい顔で言葉を返す。
「…別に、嫌じゃねぇよ」
「……っ、」
そう言って、握り返された手。
顔を赤くして自分から逸らす日向には自分の行動と発言が急に恥ずかしく感じてきた。
なんて大胆な事を自分はしてしまったのだろう…!
でも今さらこの手を離すなんてには出来ない。
「い、行きましょう!部活が終わらない内に戻って来ないとですもんね」
「…おう」
順平先輩に今ハッキリと顔を見られなくて良かった。
は空いている手で自分の顔を押さえる。
熱くなっている顔はきっと赤いのだろう。
日向にバレないように声だけは必死に平静を装った。
(ドキドキしてるの、手から伝わったらどうしよう…恥ずかしい…!)
願わくばどうか、日向に何も悟られず行って帰って来れますように。
ただ、日向と繋いだ手の温かさにほんの少し頬が緩まるなのであった。