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Come To Me.(黒子のバスケ超短編)

第22章 京都旅行。(赤司征十郎)


事の始まりは、母の「秋の京都へ行きたい!」の一言だった。
半分巻き込まれる形で一緒に来たものの、結婚して10年を越えて尚ラブラブな両親は一人娘を放って二人で観光へ行ってしまった。

「もう……っ!」

それだけならまだしも、

「、待たせたね」
「……ううん、ごめんね征十郎…」

帝光中時代からの母の大のお気に入りである赤司が京都にいると知るやすぐに娘のエスコートを頼んでしまったのだ。

「うちのお母さん強引だから…征十郎だって忙がしいのに……」

申し訳なさと恥ずかしさとでは肩を落として何度も赤司に謝るが、赤司は柔らかな笑みを浮かべて彼女の頭を撫でた。

「俺は大歓迎だよ、電話じゃなくてこうして会えた事が嬉しい」
「征十郎……」
「は俺に会えた事、嬉しくない?」
「…ううん、それは嬉しい………」
「なら楽しんだらいい、折角来たんだからね」
「…うんっ」

が頷いて笑顔を見せると赤司も笑って手を差し伸べた。

「さぁ、行こう」

格好付けているわけでもなくとても自然に差し出された手には緊張しながら自分の手を乗せる。

それから有名な寺院、観光名所を回る間も繋がれた手は一度も離れる事はなかった。
昼食時離れたとしても食べ終わり店を出れば再び繋がれる。
初めは恥ずかしかったも次第に慣れ、京都を満喫していた。


「たくさん歩いたね…!楽しかったぁ…ありがとう、征十郎」

夕方、そろそろは宿泊するホテルへと戻る時間が迫っていた。
両親もそろそろ戻ってくるだろう。

「………」

赤司は何も言わずに繋いでいた手を離す。

「………あ、」

つい、の口から漏れた声。
今日一日、ずっと繋がれていた手が離された事に小さな寂しさと不安を感じてしまった。
その手をぎゅっと握り締める。

「今、寂しいと…思ってるかい?」
「……っ、」

赤司の顔を見つめれば、穏やかな笑みで真っ直ぐに自分を見ている。

「もしそう思っているのなら……」
「せ、い……!」

不意に、ふわりと抱き締められる。

「早く、俺を選ぶといい」
「………征、十郎…」


古都の街並みと共に、夕陽が優しく二人を包んでいく。
こうしてはまた眠れぬ夜を迎えるのだった。

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