第18章 浜辺。(緑間真太郎)
「あれ?」
浜辺に戻ったはパラソルの下、一人座っていた緑間を見る。
緑間は確かまだ海に入っていなかったはず、それなのに。
「真太郎…なんでびしょ濡れなの?」
「……黄瀬と高尾のせいなのだよ」
隣に腰を下ろして話を聞けば、ここで読書をしていた緑間を水鉄砲を持った黄瀬と高尾が襲撃したらしい。
「全くアイツ等はろくな事をしないのだよ…」
そうボヤいて緑間は濡れた髪を掻き上げた。
「……っ、」
不意を突かれた。
普段ほとんど見せないそんな仕草がとても色っぽくて、は思わず顔が赤くなる。
「?、どうした?顔が赤いのだよ」
「…や、あの…そうやって髪を掻き上げる真太郎が、なんか……」
「………」
日焼けだとか、熱が籠ったとか、言い訳ならいくらでもあるのに。
素直にそうやって口に出してしまうから。
「……放って置けないのだよ」
「…?」
「それは俺を男として見ている、と言うことか?」
「へ…?あ、えと…!」
緑間の手がレジャーシートの上に置かれていたの手に重なる。
「し、んたろう……?」
「………っ」
眼鏡の奥の瞳が揺れる。
自分はこんなに我慢が効かない人間だっただろうか。
重ねた手を引き寄せて抱き締める。
お互いに水着同士、触れ合う肌の面積が多いせいで体温をより感じてしまう。
「俺はずっと……っぶ!!!」
「お邪魔虫さぁーんじょう!!」
「抜け駆けダメ絶対!!ッスよ!」
が驚いて振り向けば、水鉄砲をヒーローの様に構えた黄瀬と高尾。
「お前等………!」
「「やべっ…!」」
再び顔面に水を掛けられた緑間がスクッと立ち上がり二人の後を追い掛け始める。
「ふふ、仲良いなぁ…、涼太も秀徳に溶け込んじゃってるよ」
レジャーシートに一人残されたは三人を見て楽しそうに笑った。
そこへさつきが戻ってきた。
「~、泳がないの?」
「さつき、うん、もうちょっと三人見てようかなって」
「あー何あれ!ミドリンが交ざるの珍しい!」
「ふふ、でしょ?」
『俺はずっと…』
その後に続く言葉は一体何だったんだろう?
真相をこの日には聞けないままお開きとなった。
(また、いつか話してくれるかな…?)
夏休みが明けるまで、後僅か。