第14章 フレグランス。(黄瀬涼太)
「久しぶりに格好良い俺を見に来て欲しいッス!」
そんな黄瀬の誘いを受けては黄瀬の雑誌の撮影現場を見学に来ていた。
カメラを構えられる度にポーズや表情を変える黄瀬をじっと見つめる中で、は今日黄瀬に会ってから感じている違和感が何なのかをずっと考えていた。
(何だろう……?何かが…?)
「っちー!!」
「お疲れ様、涼太」
が笑顔を向けると黄瀬は嬉しそうに微笑み返した。
「俺どうッスか?!良い感じッスか?!」
「うん、格好良いよ」
「へへっ!良かった!っちがいるから今日はいつもの3倍やる気出てるッス!」
「あ…!」
の熱い視線を受けてやる気が出ない筈がない。
そう言って黄瀬がその場で髪を掻き上げた時、はずっと考えていた答えに辿り着いた。
「…っち……?え、と…?」
は黄瀬の服を掴んで引き寄せ、顔を首元に近付ける。
突然のの行動に黄瀬の胸はドキドキと高鳴り始めていた。
このまま腕を回して抱き締めてしまおうか。
そう思い、黄瀬がごくりと唾を飲み込みそっと腕を動かした時だった。
「……やっぱり!」
「………え?」
パッと体を放しは黄瀬の肩をポンと叩いて
「涼太、コロン変えた?」
「へ…?あ、うん…使ってたヤツ切らしてて、あんまり普段使わないヤツを今日は使ってるッスけど…」
「あー!スッキリした!」
「っち…?」
「いつもの涼太と何か違うなぁってずっと思ってて、漸く解決!スッキリ!」
じゃあ、何か。
今までの視線は熱視線じゃなくて…今日の自分の違いが何かをずっと考えていた視線だったのか…。
ガックリと肩を落とした黄瀬だったが、の言葉ですぐに復活する。
「今の香りも良いけど、私はいつもの方が涼太らしくて好きかなぁ?」
「………好、き……?!!」
「涼太?」
「俺!今からあのコロン買って来るッス…!」
「え…?えぇっ!?ちょ…!涼太…!?」
後日、元々使っていたコロンに戻した黄瀬が、コロンの付け過ぎで笠松に「クセェ!!」と思い切り殴られた事をは知らずにいたのだった。