第12章 待ち伏せ。(氷室辰也)
「Hi.誠凜のマネージャーさん」
「………氷室さん?」
明日から夏休み、部活終わりに帰宅しようとしていたは校門の所で見知った顔と出会した。
ここで会うとは思いも寄らなかった人物に驚いて開いた口が塞がらない。
「……校門にやたら綺麗な男の人がいるって皆騒いでたんですが…氷室さんだったんですね」
「誠凜は明日から夏休みだろ?うちもなんだ、それで明後日まで大我の所に泊まる事になっててね」
「あ、大我を迎えに来たんですか?」
呼んできます、そう言おうとしたを氷室は笑顔で制した。
「いや、待っていたのは君なんだ」
「私……?」
不思議に思っては氷室を見上げた。
氷室の甘いマスクに思わず顔が熱くなる。
「君とは何度か顔を合わせているはずなのに俺は君の名前も知らないままなんだ」
「は、はぁ……名前……?」
そうだっかな、とは首を傾げた。
「だから今日これからの時間を俺にくれる?マネージャーさん」
「…………は、はい」
氷室のキラキラとしたオーラには反射的に頷いてしまった。
「と、言っても俺はこの辺りに詳しくないからね…何処かゆっくり出来る場所あるかな?」
「あ、じゃあ…」
が氷室と訪れたのは住宅街の中にある静かなカフェ。
空いている時間帯なのか客も少なく落ち着けそうだった。
だがそれでも、
(し、視線が痛い…!)
女子大生や、若い主婦からの視線がチクチクと突き刺さる。
氷室を見るうっとりとした目からのを見るジロリとした目。
氷室はと言えば、そんな視線全く気にしていない様子だった。
そうだ、気にしても仕方がない。
今氷室の隣にいるのは自分なのだから。
「さっきから百面相、どうしたんだい?」
「……いえ、今だけは氷室さんのパートナーは私なんだからって腹を括ったところです」
「……………!」
「ん?あれ、氷室さん…私の名前…?えぇっ!?」
テーブルの上で突然手を握られは驚いてしまう。
「ひ、氷室さん…?あの、手…!あと名前…知って…?」
「、今日だけなんて言わずこの先ずっとパートナーでも俺は構わないよ」
「……!」
氷室の口車に乗せられた、とが漸く気付いたのはカフェを出た後の事だった。