第11章 電話。(赤司征十郎)
「ふぁ……あ、」
「アラ、ちゃん寝不足?」
朝練を開始して早々、の大きな欠伸を見てリコが物珍しそうに言った。
「すいません…!昨夜ちょっと眠れなくて、アハハ…」
「ヤダ、そうだったの?無理はしないでね?」
「はい、ありがとうございます」
「ちょっとメニューの説明してくるわ」
「はい」
リコが部員達の所へ行くのを見送ると、は小さく溜め息をついた。
(もう……征十郎のせいだ…)
ほんのりと頬を赤く染め、は昨夜の事を思い出していた。
それは、突然掛かってきた赤司からの電話。
昨日の22時の事だった。
「はーい、征十郎?」
「やぁ、久しぶりだね。今大丈夫かい?」
「うん、珍しいね?電話なんて」
「特別用事があるわけではないんだけどね、声が聴きたくて」
久しぶりに聞く赤司のダイレクトな発言にの心臓は音を立て始める。
中学時代はこんな事日常茶飯事だったからも笑って聞いていたのに。
「?」
「…っうん?」
思わず声が上擦ってしまった。
「お互いの近況報告でもしようか」
「うん、そうだね」
ウィンターカップが終わってから一月。
学校での事、新作のスイーツの事、新しいバッシュを買った事。
お互いの話をする内に気付けば二時間も時間が過ぎていた。
「…そろそろ寝た方が良さそうだね」
「ん…そうだね、私も眠たくなってきた…」
眠気を帯びたの声は少し幼く聞こえる。
赤司はクスリと笑って口を開いた。
「」
「んー…?」
「…君が早く俺の物になりますように」
「………せっ?!」
「おやすみ」
言葉の後に聞こえたリップ音。
つまり、それは。
「お、やすみなさい……」
そう辛うじて言い、通話を終える。
切れた後もはしばらく携帯を見つめていた。
「で、電話越しに…キスされた…!」
言葉にした後、すぐに後悔した。
口に出すと何倍も恥ずかしくなってきてしまったのだ。
「眠れないよ……!」
ベッドに潜り込んだ後も中々寝付けない。
頭を巡るのは赤司の甘い言葉とあのリップ音。
結局寝付いたのは深夜2時を回っていて、これが朝練の大きな欠伸に繋がっているのであった。