第5章 帰り道。(黄瀬涼太)
「っちぃー!!」
「わ…涼太?」
部活終わりの校門に女の子の人だかりが出来ていた。
そしてその中心から飛び出して来たのは黄瀬。
飛び出すや否やに思い切り抱き着いたので、女の子達と誠凛バスケ部メンバーの嫉妬の視線が二人に突き刺さった。
「どうしたの、涼太」
「お迎えに来たッス!」
「お迎え…?」
「そッス!っちと一緒に帰りたくて」
「そっか、ありがとう!じゃあ皆さん、今日はここで…お疲れさまでした!」
そこまで言い切られてしまったらもうバスケ部メンバーは何も言えなくなってしまう。
悔しさで奥歯を噛み締めながら二人の背中を見送った。
「それにしても涼太、急に迎えに来るなんてどうしたの?海常で何かあったの…?」
「え……?」
すぐに自分の心配をしてくれる彼女は昔から変わらない。
可愛くて、放って置けなくて、自分だけの女の子にしたくて堪らなくなる。
「心配してくれてありがと…でも大丈夫ッスよ!俺がここに来たのはこないだ見ちゃったからなんス」
「見ちゃったって?」
「………」
いつもは途切れ知らずな会話を展開する黄瀬が黙り混む。
そんな様子を不思議に思ったが彼の顔を覗き込んだ。
「火神っちと……」
「大我?」
「っちが仲良く手ェ繋いで歩いてるのを見ちゃったッス…!そんなの…そんなのズル過ぎるッスよ!」
「え……?」
ポカンとした顔のの手を黄瀬は優しく握る。
その手はしっかりとした繋がれ方、所謂恋人繋ぎで結ばれた。
「りょ、涼太…これはちょっと恥ずかしい…」
「ダメ、俺以外と手繋いだっちが悪いッス!」
只でさえその整った容姿で目を引く黄瀬なのに。
これでは女の子達の視線が痛すぎる。
チラリと黄瀬の顔を伺えばニコニコと嬉しそうにしていた。
(折角、迎えに来てくれたし……)
「だったら、マジバに寄り道して帰ろう!」
「マジッスか!?デート!!」
「デートじゃなくて寄り道です!」
そこの曲がり角を曲がれば目的地。
ただ、着いたマジバに黒子と火神がいることを幸せの絶頂の黄瀬はまだ知らなかった。