第58章 花魁ノ舞
「私も行きたい!」
広間に飛鳥の声が響く。
『いや…でもな?飛鳥はちょっと…』
秀吉が困った顔で飛鳥を落ち着かせるが、飛鳥はなおも声を荒げる
「行きたい!ねっ?お願い!私も見たいの!」
『あんた…どんな所だかわかって言ってるの?』
家康も呆れ顔で呟く
「わかってる!ちゃんとわかってるもん!でも本物見たいの!」
『でもな…女の飛鳥が行くところじゃねぇーしな…』
政宗も 頭を抱える
「お願い…お願いします!信長様!」
信長に向き直り頭を下げる飛鳥
『くっ…やはり面白い奴だな…良い。付いて来い』
『御屋形様…』
信長の言葉に項垂れる秀吉をよそに、飛鳥はパァッと笑顔を見せる
「ありがとうございます!やったー!嬉しい!」
…………
数日後
『飛鳥様、御気をつけて行ってらっしゃいませ!』
エンジェルスマイルが太陽に照らされて眩しい…
「うん!行ってきます!三成くんもお留守番よろしくね!」
政宗の前に座った飛鳥が手を振るのを合図に馬は走り出す。
「楽しみだねー!あっ!お仕事の邪魔はしないからね?私の楽しみは1つだから!」
『邪魔なんかじゃねぇーけどさ…本当に行くのか?』
未だに渋る政宗に飛鳥は意気揚々と告げる
「当たり前でしょ?こんな機会滅多にないんだから!」
織田家一行は京へ向かっていた。
飛鳥が頭を下げてまで行きたかった所…
花街。
未来から来た飛鳥にとって花街の事はわかってるが、実際に見た事はない。
信長達が花街に行くのをたまたま聞いた飛鳥は、連れてってもらいたいと懇願した。
無事信長の許可を得て今に至る…
『飛鳥、花街に行ったら俺達から離れるんじゃないぞ?』
秀吉にいつものように言われる飛鳥
「うん!でも一人で歩いてても遊女には見られないよ!こんなんだし!」
自分の胸を叩きふにゃっと笑う飛鳥
(気付いてないから困るんだよな…)
秀吉が思うように、他の武将達も思っている。
花街に飛鳥を連れて行けば遊女と思われるに違いない。
それだけの魅力はある。
だが飛鳥本人は自覚していない…