第6章 Important person〜葛藤
飛鳥が歩くまでに半月を要した。
傷の痛みも少なくなり中庭に出れるまでに回復はしたものの、あの日から飛鳥は笑わなり、言葉も殆ど発する事がなくなった。
そんな飛鳥の元には毎日代わる代わる武将達が顔を出す。
『飛鳥入るよ』
家康は傷の手当てと具合を見にくる
飛鳥の横に座り木箱から薬を出す
『ごめん。ちょっと鎖骨の傷見るから』
そう言って胸元を少しだけ開き、傷に当てたある布を優しく取る。
傷口に薬を塗り新しい布を当てる
『脇腹触るよ』
青い痣が酷かった脇腹は触られても痛みはなく、痣も薄っすら残るまでに回復した。
『うん。だいぶ良くなったね』
飛鳥が着物を整えると政宗が朝餉の膳を持って部屋を訪れる
ほぼ毎日飛鳥に食事を作り部屋を持ってくる
『飛鳥この煮物好きだったろ?いっぱい食えよ』
飛鳥はコクリと頷き煮物を一口食べる
それを見届けると頭をクシャっと撫でて部屋を出て行く
『食べたらこれ飲んでね』
家康もそう言って薬を置くと部屋を後にする
『飛鳥様、おはようございます。新しい巻物ここに置いて行きますね。私にできる事があればいつでも言ってくださいね』
三成が置いて行ってくれる巻物を眺め、昼餉を食べると縁側に座り庭を眺める
『飛鳥、調子はどうだ?机借りるぞ』
秀吉が手に書物を持って部屋に入り飛鳥の机で仕事を始める
しばらくすると光秀が飛鳥の頭を小突きニヤっと笑って通り過ぎる
皆んなが毎日何かしらで飛鳥に会いにくる
(みんな…あんなに迷惑かけたのに…色々伝えたいのに…言葉が出ない…)
飛鳥は周りの優しさに感謝はしていたものの、自分の不注意で周りに迷惑をかけた事に申し訳なさを感じずにはいられなかった