第52章 夢幻〜信長〜
やっといつもの日常が戻り、飛鳥もお針子の仕事を再開する。
仕事をしていると信長が部屋を訪ねる
『飛鳥おるか?』
「はい」
手を止めて信長を見上げる飛鳥。
信長は隣に座り羽織を出す。
『直せるか』
飛鳥に渡すと
「破れてしまったんですね?えっと…あっ、これならすぐ直せます」
羽織に糸を通す飛鳥に
『無理はするな。急ぎではない』
そう言って飛鳥の隣に座る
いつもなら直ぐに部屋を出て行ってしまう信長。
「少し眠りますか?」
『あぁ』
信長が飛鳥の部屋に腰を下ろすときは、少しだけ眠りにつく時。
お針箱を退けて膝の上をトントンと叩くと、信長がそこに寝転ぶ…
目を瞑ると飛鳥の匂い…
飛鳥の匂いは落ち着く
信長は飛鳥の隣でだけ熟睡出来る。
膝の上に寝転ぶ信長の頭を優しく撫でる飛鳥。
心地よくて直ぐに眠りについた…
………
『飛鳥?』
秀吉がいつもの様にお茶をと誘いに来る
「しー!」
口に人差し指を当てる飛鳥
その膝で寝息をたてる信長
慌てて自分の口を塞ぐ秀吉に小声で呟く
「今日はお茶出来なくてごめんね」
秀吉は驚きながらも
『いや…御屋形様が熟睡しておられるからな』
そう言って部屋に戻っていった。
…………
『信長様…』
しばらくして信長を起こす飛鳥
『…ん…』
薄っすらと目を開けると飛鳥の顔
膝の上から起き上がると
「寝癖…」
飛鳥が髪を撫でる
髪を直して飛鳥がお茶を淹れる
『飲んだら戻る』
「はい」
ニコっと微笑み湯呑みを渡され一口飲む
何度も飲んだお茶…
何故だか今日はいつもより美味しく感じた
部屋を出る時飛鳥に告げる
『今宵天守に来い』
頬を染めた飛鳥が頷いた…