第48章 夢幻
「いっぱい迷惑かけたお詫びです。私が作ったから、味の保証は出来ないけど…どうぞ」
身体が動くようになった飛鳥は誰にも気づかれぬ様料理場に篭り団子を作った。
大和の事はしょうがなかった事。
あの時の隠し事は大和に許嫁がいたって事。
両親が決めた事とはいえ、少なからず親に後ろめたい気持ちがあったのだろう。
記憶は飛鳥の事だけ抜け落ちてて、戻る事はなかった。
飛鳥が必死に大和に会いに行っても会わせてももらえなかった。
飛鳥と出会って飛鳥と結婚すると言ってくれた大和。
その気持ちには嘘はなかったと思ってる。
しばらくして風の噂で大和が結婚したって聞いた。
それからは試験勉強に没頭して、気持ちの整理もついてたって思ってた。
ただ…そんなにきっぱり出来なかったんだろう。
自分の知らないところで忘れる事は出来てなかった。
でも。
信長に一人じゃないって言われて、大切な事も思い出した。
私にとって大切な人達は、この安土にいる。
もう過去には囚われない。
美味しそうにお団子を食べる皆んなを見つめてると、温かい気持ちになる。
私はずっとここで生きていく…
もう迷ったりしないから…
完