第42章 夜も日も明けない〜家康〜
『飛鳥』
「あっ、家康!」
家康が膳を持って飛鳥の部屋に入る
『俺もここで食べるから』
「うん」
アレから半月が過ぎた。
目を覚ますと泣いてる家康が居て、周りに皆んな集まってて…
何が起こったのかわからなくて、起き上がれるようになってやっと話してもらえた。
部屋に来るたび秀吉さんに、おでこがすり減るんじゃないかってくらい頭を下げられたけど、私の不注意だからやめてもらった。
食べれるようになると政務があるのに毎食政宗が作ってくれる。
その合間に三成くんが巻物を持って遊びに来てくれて、光秀さんが…からかいに来てくれた。
家康はなるべく私から離れない様に側にいてくれて、今は天邪鬼もあんまり顔を出してない。
皆んな私が1人にならない様に、側に居てくれてた。
私といえば、事の重大さに後から気付いたものの、断っても世話を焼いてくれる皆んなに有難くもあり、気恥ずかしくもあった。
夜は毎日家康が一緒に寝てくれて、絶対私が寝付くまで起きて居てくれてた。
目覚めればいつも家康が私を見つめている。
凛さんは、初め決まっていた処分に私が抗議して、安土から遠い領地に幽閉する事に決まった。
幽閉と言っても監視はあるが女中として働いてるらしい。
信長様には面白がられたが、秀吉さんには怒られた。
自分の命を狙った相手なのに…って。
凛さんと接しても悪い人とは思えなかった。
家康からも聞いたけど、初めの薬の量だったら、私は今ここにはいないって。
だからどうしても心から悪に染まったわけじゃないって思う。
今でも凛さんが好きになった人は幸せ者って思える。
『飛鳥?』
「はっ、はい!」
急に呼ばれて考え事をしていた飛鳥は思わず声がうわずった。
『全然箸進んでないけど、まだ身体ツライ?』
「ううん!考え事してただけ!身体は何ともないよ!」
急いで食べると
『慌てすぎ』
家康が笑うと釣られて飛鳥も笑う。
『明日御殿に帰るよ』
「うん!わかった!楽しみだな…」
アレからずっと城にいたが、体調が完全に戻るのを待っていてくれてたんだろう。
いっぱい心配かけて甘やかしてもらった分、御殿に帰ったら家康にいっぱい尽くそう。
家康に救ってもらったこの命。
ずっとずっと家康の側で、大事に生きていきたい。
完