第30章 最愛の人〜秀吉〜
包まれていた手をそっと抜き飛鳥を抱き締める
『飛鳥を手放して…後悔したくない。もしお前が未来に戻るとしても、その瞬間まで飛鳥と一緒にいて、お前を甘やかし続ける。後悔したくないから…飛鳥の側に居たいんだ』
月華と会って動揺しなかったわけじゃない。
月華と会ったからこそ、飛鳥を手放したくない。
後悔だけはしたくない…そう思えた。
自分の気持ちを再確認できた。
「秀吉…さん…っ…」
腕の中の飛鳥は堪えてた涙がとめどなく溢れ出して声にならない
『飛鳥…不安にさせてごめんな?俺は飛鳥が好きだよ…飛鳥をもっともっと甘やかしたいんだ…愛してる…』
『政宗が飛鳥を奪うって言ってきたんだ。でも…政宗にはやれない…飛鳥は俺に甘やかされて俺無しでは生きられなくなってくれ…俺が愛してるのは、今もこれからも飛鳥だけだ…』
泣きながら飛鳥が呟く
「でも…月華さんは…側にいたいって言われたんだよね?」
(あぁ…政宗の奴…)
『政宗に聞いたんだな?ちゃんと、伝えてきたよ…飛鳥を手放したくないから、ごめんって…』
『城下で飛鳥を手放したくない…最愛の人だ…なんて公言しちまったな…飛鳥に何かあったら嫌だから言わないようにしてきたのに…』
その言葉に飛鳥が顔を上げる
「私の事…皆んなに知られたくなかったんじゃないの…?」
ふっと笑って飛鳥の頭を撫でる
『そんな訳ないだろ?いつでも甘やかしたいのに…言わなかったのは、飛鳥に危害が及ばないようにだ…御屋形様の寵愛を受けてるって言ってた方が安全だろ?でも…もうそれもやめる…誰の前でもお前を目一杯甘やかすから…』
「うん…あっ…政宗に秀吉さんがダメなら俺が貰ってやるって言われた…」
目一杯の愛を囁かれた飛鳥は少し笑いながら政宗の事を伝える
(政宗なりに…飛鳥を想ってくれたんだな…)
『明日…城に行こう…政宗に飛鳥は渡さないって言わなきゃな…』
…………もう後悔はしないから…
その手を絶対離さない…
完