第2章 会いに行くから、お姉ちゃん。
やっと会える。
私の可愛い可愛い可愛い妹に。
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「神恵さん!もうすぐ地球に着きますよ!」
私の直属部下である瑠樺が部屋に現れて声高らかに私に伝える。その声はどこか浮ついていて、どうやら瑠樺も地球停泊を楽しみにしているようであった。
『りょーかーいー』
私はまだ地球にいく実感が湧かなくて腑抜けた返事を返し、そっと窓から地球を眺めていた。
これから停泊する星、地球。
それは資源も文化も揃っており、太陽はサンサンと照り、雨は大地を湿し、生き物達が共存するにあたっては魅力的すぎる星だ。
故に鎖国をしていた地球も、呆気なく異星人に攻め込まれ、今となっては私たちのような地球人以外がのさばることの出来る、ある意味"共存"する星に成り果てたという。
しかし夜兎にとって地球の日差しは太陽の恵みでも、資源でも、なんでもない。ただの兵器であるため、普段ならあまり寄り付きたくないのだが今回は訳が違うのだった。
「妹さん、元気に過ごされてるといいですね。」
横から瑠樺は同じく窓を見つめつつ話しかけてきた。私が地球に降り立つ理由は何を隠そう妹に会うため。ただそれだけだ。
「大丈夫。私の妹は、ちょっとやそっとじゃ折れないから。私よりもたくましく生きてるよ。」
妹の強さは幼い頃から計り知れないものがあった。病弱な母の代わりに時たま家に帰って妹の世話をしていても、随所随所に現れる夜兎の強さは本能的に危険を察知するほどには強かった。それは、弟も同じだが。そんなところは父親似だろうか。
圧倒的な強さを誇る弟と妹は私の自慢だった。その2人の姉であることもまた自慢だった。夜兎として強さは名誉や誇りである。私は自分の強さよりも弟妹たちの強さの方がずっと誇らしかった。それが幸せで、そのまま家族が続いていけばそれだけでよかった。…それだけで良かったのだ。