第13章 生きて
そこで牢獄に入れたとしても、いずれ人を殺すだろう未来が視えた。
はっきりと、その未来が揺るがぬものだと伝わってきた。
それを心から楽しんでいることまでもが、全部…
だから、死刑を執行するしかない。
グレイクから言われたように、誰かがやらなければいけない。
でも……どうしても、やりたくなかった。
でも誰かが手を汚すのが耐えられなかった。
だからこそ誰が決定打になったか解らない方法で殺した。
誰かが思い詰めないように、殺される側も殺す側も苦しまないように、そう願いながら…
それでも…
背負わせちゃいけないものを背負わせてしまった。
本来なら、背負うはずのないものを背負わせてしまった。
自分なんかがいるから…いけなかったんじゃないのか?
ふと、昔から言われ続けてきた言葉から、そんな思いがよぎった。
クレハ「大丈夫ですか?
心なしか、青ざめているようにも見えますが」
ケイト「クレハ…
どうしよう……わからなく、なったんだ」
クレハ「?何が?」
それから、私が先ほどまで考えていたことも含め、丸ごと伝えた。
自分がいなければ、こんな事態にはなっていなかったんじゃないだろうか…
その疑念にさいなまれていることを伝えた。
ケイト「自分なんか、いない方が…;」
クレハ「逆です」
ケイト「え?」
その苦悩を語ると、クレハがはっきりと否定した。
クレハ「自分を否定することは、簡単に出来ます。
ですが…それは、あなたのおかげで助かった命までなかった方がいいということにも繋がります」
ケイト「!…え?」
クレハ「あなたがいたから、私達は生きてこられた。
きっと、あなたが止めなかったら、尽力してくれなかったら私を含めた2000人は死んでいたでしょう。
それほどの危機を、あなたが何とかしてくれた。
何とかしようと、誰もが楽しめるようにと頑張ってきた。
だから私は…
私達は、『今が、とても楽しい』」
ぽろっ
ぽとっぽととっ
その瞬間、胸の奥から温かな何かが込み上げ
温かい雫が頬を伝って落ちていった。