第1章 可愛い君
いつだって彼氏には可愛いと思ってほしいとは思うわけで、
女の子と言えば白いワンピースだと思うわけで、
私にとって、これぞまさしくといったワンピースを見つけてしまったわけで
(に、似合わない・・・・)
わかってはいたのだ。可愛いものは似合わないとは思っていた。けれど!
(か、買ってしまった・・・・)
裕介はなんて言うだろう。
似合わないと笑うだろうか。
いや、優しい裕介の事だ嘘でも似合うと言ってくれ・・る・・・はず・・。
そうやって、部屋でもんもんとしている名をよそに洗面台の方で寝仕度をしている巻島。巻島がまだ部屋には来ないだろうと思い、名はいそいそとワンピースを着てみる。
鏡の前に立ってみれば、やはり可愛いのはワンピースで自分ではない。
「裕介さん!」
そう言って、その姿のまま洗面台に行くと、驚いた様子で名を見る歯磨き際中の巻島。
「に、似合うかな?」
そうきけば、まじまじと見つめてくる巻島の視線。その視線に耐えられず、反応がない雰囲気に、
「や、やっぱり似合わないよね」
と苦笑して部屋に戻って、鏡の前に座り込む。
(やらかしたー)
とへこみながらも鏡を見ると、想像とはかけ離れてるが女の子らしい自分に嬉しくなる反面、似合わない自分にまた苦笑してしまう。ため息が止まらない。
(何も言われないのも、これまたショックだ!)
とふせこむと部屋の戸が開き、後ろから巻島に抱き締められる。
「可愛いのはワンピースだけだった」
と鏡越しに笑う名に
「そんなことないっショ」
と笑みを返す巻島。
「で、でもでも、何も言わなかった」
まさかの巻島の言葉に、巻島の方をむくと、頬をポリポリとかきながらあー、うー、と言葉を濁す巻島。そして
「可愛いすぎて、何も言えなかったっショ」
と恥ずかしそうに言った。
「いきなり来たと思ったら可愛いすぎた」と続く誉め言葉に名も真っ赤になっていく。恥ずかしすぎて、鏡の方をむくと愛しそうに名を見つめる巻島と目が合い、それにまた恥ずかしくなって顔をそらす。
「ま、何着ても名は可愛いっショ」
と、照れてる彼女を見て巻島は名の首筋に唇をおとしたのだった。