第1章 姫、木ノ葉におはす。
(届けっ)
ダメだと分かっていても、強く祈ってしまうのは負けず嫌いの性と言えよう。
花は咄嗟に右手を強く握り、切に祈った。
すると、的周辺の芝生が急激に成長し、手裏剣に巻きついた。
伸びた芝生はそのまま的の中央に手裏剣をゆっくり刺し込む。
刺すと、何事も無かったかのように、芝生は元の姿に戻った。
その一瞬とも言える時を、花を除く全員が唖然として見つめていた。
花はと言えば、どうだ!と胸を張って誇らしげにしている。
「に、忍術なんてずるいぞー!」
「ええーい!騒がしいのじゃ!
大自然がわらわに味方をしたのじゃ、ほっほっほ」
間を開けて文句を言い始めた一部の男子生徒に対し、気丈なお姫様は、悔しかったら当ててみろと挑発をしている。
そんな中、イルカは少々冷や汗をかいていた。
三代目火影様、そして彼女を見張る第一責任者のはたけカカシ、それから自分にのみ、臣下から語られた“血継限界”について考えていたのだ。
彼女が放った、大自然が味方したという言葉……あながち、間違いではないかもしれない。