第1章 姫、木ノ葉におはす。
ある朝、花は嬉嬉として登校していた。
以前自分で初めて作ったお弁当を自信満々にサクラに味見をしてもらったところ、微妙な反応をされてしまった。
そのため、臣下に頼み込んで料理の練習をしたのである。
改めて作ったお弁当は、以前のものより格別に美味しくなっていた。
今度こそサクラに認めてもらえるだろうと思い、気分が高揚しているのだ。
「……?」
ふと、河原から何かが燃えるような音と匂いを感じて振り向いた。
黒い髪の同い年ほどの男の子が、忍術だろうか?
懸命に練習をしていた。
(ほうほう。感心じゃ)
そこで何を思ったか、花は彼に気付かれぬよう少しばかり近付き、傍にお弁当をそっと置いてアカデミーへ向かった。
忍術は体力を物凄く消費するのを最近知ったお姫様は、手ぶらの彼を見てきっと役に立てばいいと思ったのだった。
サスケside……
きそろそろアカデミーへ向かおう。
と修行を切り上げたサスケは、自分の周囲に違和感を覚えた。
川の青色、桟橋の茶色、それから河原の緑色のみだった色彩に、小さなピンク色が加わっていた。
警戒しながらも包みを解いてみると、それはお弁当だった。
誰かの忘れ物だろうかと思ったが、朝はここを誰も通らないはずであるし、朝から自分しかいなかったはず。
蓋を開ければそれはまた豪華で、里の一般人が普段は口にしないような食材が並んでいた。
見ず知らずのものを食べるのは危ないと分かっていても、修行で失われた体力や満腹感に負けてしまい、思わず1口食べてみる。
「……うまい」
綺麗に平らげたサスケはその弁当箱をどうするか、処理に困ってしまった。
とりあえずアカデミーへ向かって、授業が終わってから考えよう。