第1章 姫、木ノ葉におはす。
「俺の名前は犬塚キバ。んで、こっちは相棒の赤丸!」
「アン!」
男の子は、ニカッと人懐こく笑ってみせた。
「わらわはアカル花じゃ。お花ちゃんとでも呼んで良いぞ。ほっほっほ」
友好的に話しかけられたことに気を良くしたお姫様は、お上品に笑ってみせた。
キバはと言えば、花の話し方に驚いていた。
(明らか一般人じゃねーな……)
と、式の最中彼女が一体何者なのか、ずっと頭を悩ませていたのだった。
式が終わり、クラス分けが発表された。
キバと軽く挨拶を交わした花は、1年間自分が在籍するクラスへ向かった。
声の掛けやすそうな人の隣に座ろうと思った花は、桃色の髪をした少女の隣へ腰掛けた。
「よ!」
キバから得た(お姫様にとっては)新種の挨拶をすると、桃色の髪の少女は目をぱちくりとさせた。
「うーん、使い方を間違えたかのう……」
難儀じゃ……と考え込み始めた花に、しばらく呆然としていた少女はハッとして、挨拶を返す。
「おはよう!はじめましてね。私、春野サクラ」
サクラは単に、可憐な見た目のお姫様が男子のような挨拶をしたことに驚いていただけだった。
「おお!可愛らしい名じゃ。わらわはアカル花と申す。お花ちゃんとでも呼ぶが良いぞ」
「ええ。じゃあお花ちゃん、これからよろしくね!」
「こちらこそじゃ!」
サクラside……
私に話しかけて来た女の子は、とても上品で、言葉では言えないような雰囲気を纏っていた。
話し方からして、きっと偉い人の子どもなんだと思ったけれど、予想に反してとても気さくで話しやすかった。
時々的外れなことを言ったり、皆にとっては当たり前のこと……例えば宿題であるとか……に関して、なんじゃそれは。と首をかしげたり。
そんなところがやっぱりちょっと世間知らずで、私の中では彼女が偉い人の箱入り娘なんだろうという考えが膨らんでいった。
それでも、友達には変わりない。
あんまり勘ぐっても失礼か、と結論づけた私は、これからのことを説明している先生に注意を向けた。