第8章 本音
「話…って何ですか?」
助手席で苦しそうにしながらそう聞く灰羽くん。
「旦那に、バレた。」
意を決してそう言うと、灰羽くんははあとため息を吐く。
「知ってます。旦那さんに釘刺されました。」
…もしかして、珍しく誘って来たあの日。
あの日に孝支は灰羽くんに会った…?
「…そっ…か…」
「旦那さんにむちゃくちゃ愛されてるじゃないですか。
俺なんかで遊ぶよりずっと…ずっと楽しそうだし…」
「そうね…」
優しくて素敵な旦那。
共働きだからって家事も折半。
文乃の人生なんだから納得するまで仕事をすればいい。
そんなこと言ってくれる人なんてそうそういない。
ただ1つ物足りなかったセックスも激しく、気持ちよくなってきている。
これで満足じゃない。
何が不満?
「満たされないの。」
そうだ。
満たされないんだ。
ココロが。
「孝支に激しいセックスをされたって、優しく扱われたって、満たされないの。」
優しさが苦しい。
「灰羽くんとのセックスは満たされる。」
「どうしてですか?」
横を見ればエメラルドの瞳が私を見ていた。
じっと、私の、瞳を。
「すき、だからよ。」
灰羽くんが好きだから。
だから満たされる。
わたし、やっぱり灰羽くんがすき。